飯島企画業務日誌

『ディープフェイ』後編

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おはようございます😉
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『ディープフェイ』後編
ディープフェイクというと、どちらかというと犯罪にかかわるようなネガティブな活用法を想起するが、実はそうでないユースケースも見込まれている。注目すべき研究を行っているのは、スタンフォード大学、ワシントン大学、ドイツのTUM、グーグル、マイクロソフトなど世界を代表する大学、研究機関や企業だ。
研究者は、エンターテインメントのコンテンツを制作するために、”GAN”を始めとする動画生成技術を研究してきた。CGやリアルなキャラクターを簡単に動かしたいという目的だ。
スワジャナコーン氏の研究も、ホロコーストを実際に生き抜いた人物の動画をつくり、インタラクティブに動画と会話ができるようにすることで、歴史を身近に感じながら学べるようにするというプロジェクトから始まったものだ。
「我々研究者のモチベーションの1つになっているのは、社会をよくするマシン・インターフェース(プログラム)です。たとえば歴史学習というと、いまは音声とテキストだけのやり取りですが、そこにビジュアルが加わり、実在の人物が動画として介在することで、自分と歴史のつながりを体感し、より身近に感じることができるようになると思っています」(スワジャナコーン氏)
このほかディープラーニングの動画生成技術の事例には、オンライン学習の適用がある。バーチャル・ティーチャーが授業を行い、生徒が学ぶ。さらに生徒が住む地域の言語に対応して教えられるようになればなお便利だ。
「これまでは教科書を読んで、先生の話を聞いて学ぶしかなかったものを、その分野の最前線にいた人から直接学ぶ経験を再現できるとしたらどうでしょう。相対性理論をアインシュタインとそっくりのキャラクターから対話を通して学ぶことができたら、子どもたちももっと興味を持つのではないでしょうか。日本の子どもたちが日本語を話すアインシュタインから生の教えを得ることができたら、楽しそうですよね」(スワジャナコーン氏)
またヘルスケアのセラピーで活用したり、企業のバーチャルエージェントがやり取りを実現するといったことも可能だ。
「そのほかにも、マーケティング分野でも大きなインパクトをもたらします。たとえば、芸能人や有名人の”承認”のもと、ディープラーニングによる動画生成技術で生成されたキャラクターに台本を読んでもらうと、芸能人・有名人の時間を奪うことなく動画を作れるようになります。たとえば俳優が自身のペルソナ(より細かな情報)を”ライセンス化”できれば、撮影現場に行かなくても済むのです」(スン氏)
多くのスタートアップが、より簡単に使えるツールを発売しようとしている。顔よりも、商品や情報の生成に着目する企業もある。スン氏が在籍するAppierでは、よく売れたファッションアイテムの動画合成を行い、新しいアクセサリーをレコメンド(利用者の好みにあった物品やサービスを推薦する手法)することも行っているそうだ。
このようなポジティブなディープフェイク活用の可能性がある一方で、やはりいま深刻な社会問題になりつつあるのが、ディープフェイクポルノに代表される悪意あるディープフェイクだ。
スン氏は「ディープフェイクは、いろいろな形で使われます。しかし技術自体は本来、良いものでも悪いものでもない、ニュートラルなものです。誰がどんな目的で使うか、それによって結果が変わります。将来的にツールがそろったとき、フェイク技術が悪用されることも意識する必要があるでしょう。自分が目にする動画が必ずしも本物かどうかは分かりません」と警鐘を鳴らす。
現在のところ、ディープフェイクのターゲットは、動画や顔写真が世に広く出回っている有名人たちだ。実際に米国大統領 ドナルド・トランプやマーク・ザッカーバーグ氏などの有名人のフェイク動画も発表されている。
スワジャナコーン氏は
質の高いフェイク動画を作るには、その素材となる写真と動画が多ければ多いほどよい。だからこそ、悪意あるディープフェイクの第一の被害者は有名人になる。しかし、無名の一般人もターゲットになることがある。実際、一般人を素材にしたディープフェイクポルノが米国や中国で出回っているという報道もある。ディープフェイクポルノは相手を攻撃して拡散することで、社会的な信用を失墜させることを目的とする行為だ。
ディープフェイクは、ある意味ではセキュリティ対策と似ている。攻撃と対策のイタチごっこになるからだ。それでも、どこかでフェイクの連鎖を断ち切ることが大切だ。個人で対策できることは、公の場に写真を投稿しないこと、悪意あるディープフェイクが嘘だと分かるように世間に知ってもらい、インパクトを極力小さくすることから始めるしかないようだ。
昨年大晦日の「第70回紅白歌合戦」にAIで復活した歌手・美空ひばりが登場し、新曲『あれから』を歌い上げた。倫理面での反対意見など賛否に分かれた結果となったが、製作管理は”ひばりプロダクション”だ。
そして、たった3本の主演映画を残して1955年交通事故でこの世を去った伝説の俳優ジェームズ・ディーンは、MCF社制作の『Finding Jack』という軍用犬にまつわるベトナム戦争映画に準主役で出演するという。
このようにAIとCG技術を駆使して著名人を復活させる技法は、これからエンターテインメント界で増えていくと予想されている。もちろん、アメリカではこの一報が流れると、大きな波紋が広がった。
スターの遺産管理というニッチ市場を築いた男
このアイデアを思いついたのは、1982年にCMG Worldwideを創業したマーク・ロースラーだった。彼は亡くなった有名人の権利を十分に代表できる人物がいないことに気づき、スターの遺産管理団体を代表するというニッチ市場をつくり上げた。
知的財産のライセンスを供与する、この企業が、400人以上ものセレブリティや俳優、歴史的人物、ミュージシャン、スポーツ選手などの故人に関する権利を保有していると、2019年11月に発表した。パンドラの箱が勢いよく開けられてしまったからには、亡くなった有名人が次々にスクリーンに“復帰”していくことになるかもしれない。
こちらのCMもこの技術を使ったものです→https://youtu.be/uZLns5Q40wA
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