飯島企画業務日誌

『ミラーワールド』10/12

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おはようございます😉

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『ミラーワールド』10/12

マクロで見れば、ミラーワールドは収益増大を実現する絶大なる特質を見せるだろう。人々が利用すればするほど、さらに利益が得られる。利益が得られるようになればなるほど、人々はさらに利用するようになる。この自己強化型の回路こそがプラットフォームにとっての主要ロジックであり、ウェブやソーシャルメディアのようなプラットフォームが速く広く成長した理由でもある。しかし、この力学はまた、「勝者総取り」型であるとも認識されている。だからプラットフォーム上では、ひとつかふたつの企業による寡占が起こるのだ。こうした「ナチュラルモノポリー」にどう対処するべきかという問題に、われわれはまだ取り組み始めたばかりだ。FacebookやGoogle、WeChatといった風変わりな新手の野獣たちは、私企業であると同時に、政府のごとき特徴も併せもっている。さらに混乱するのは、それらすべてが中央集権化と脱中央集権化をごちゃ混ぜにしたプラットフォームであることだ。

長い目で見れば、ミラーワールドは水道や電気、ブロードバンドのようなユーティリティとなる場合にのみ存続できるだろう。つまり、毎月定額料金を払って利用するサブスクリプション型をとる場合だ。このヴァーチャルな場にリアルな価値があると思える限り、われわれはきっと喜んでお金を払う。

ミラーワールドの出現は、かなり個人的なレベェルでもわれわれに影響を与える。二重の世界を歩くことが、身体的にも精神的にも深刻な影響を与えることは、サイバースペースやVRの世界に住んだ経験を基に、すでに周知の事実だ。だが今回はその影響がどんなものになるかはわからないし、それにどう準備したり、避けたりできるのかはさらにわかっていない。そもそも、ARによる錯覚を引き起こす正確な認知メカニズムさえも理解できていないのだ。

大いなるパラドクスではあるけれど、ARがどう作用するのかを理解する唯一の方法は、AR環境をつくってそれを試してみることだ。それは奇妙な再帰性を描く。テクノロジーそのものが、テクノロジーの効果を精査するのに必要な顕微鏡となるのだ。

なかには、新しいテクノロジーが新たな危害を及ぼす可能性を憂慮し、「安全が保証されない限り新しいものを採用しない」という予防原則が適用されなければリスクは負いたくないと考える人もいる。だが、この原則は機能しない。なぜなら、いまわれわれが置き換えようとしている古いテクノロジーのほうが、よっぽど安全ではないからだ。毎年100万人以上が交通事故で亡くなっている。それなのに、ロボット運転によってひとりが亡くなったからと、その技術を取り締まる。政治に対するソーシャルメディアの不当な影響に恐れおののくけれど、党派的なTV番組が選挙にもたらす影響は、Facebookよりもはるかに大きなものだ。ミラーワールドも、確実にこうした厳格な規範のダブルスタンダードにさらされることになるだろう。

記事画像https://wired.jp/special/2019/mirrorworld-next-big-platform(雑誌『WIRED』日本版VOL.33より転載

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