飯島企画業務日誌

映画『レ・ミゼラブル』

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おはようございます😉

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映画『レ・ミゼラブル』
フランス・パリ郊外の町モンフェルメイユで起きる警官と黒人少年グループの衝突を描いた映画、『レ・ミゼラブル』が2月28日に公開された。

モンフェルメイユは、ミュージカル化もされ、日本でも人気の高いヴィクトル・ユゴーの同名小説の舞台でもある。格差やマイノリティー同士の分断をドキュメンタリータッチで描いた作品で、第72回カンヌ国際映画祭では審査員賞を受賞した。

メガホンを取ったのは、同地出身で気鋭のラジ・リ監督。町のギャングたちを仕切る“市長(通称)”役のスティーヴ・ティアンチュー氏と共に来日した監督は、「フランスには多種多様な文化が共存しているが、その多様性を活かしきれてないところがある」と問題意識を語る。

ラジ・リ監督とティアンチュー氏に、作品について聞いた。
――モンフェルメイユには、さまざまなルーツを持った人々、移民の人々が共生しています。モンフェルメイユ以外のパリ郊外でも、同じような状況なのでしょうか。
”ラジ・リ” ここでまず言っておきたいのは、「移民」という言い方は日本とフランスでは少し違うということです。僕らはもともとは移民だけれど、今はフランス国籍を持っていて、移民にみえてもフランス人なんです。それは植民地主義の名残なんです。そういう意味では、移民の二世はフランスの全地域にいます。でも、やっぱり多いのはモンフェルメイユのようなパリ郊外だったりします。
僕の出身はマリですが、マリにいたときからフランス国籍だったんです。それは、第二次世界大戦の頃から、フランスのために戦った祖先がいたということです。そういう状況だから、フランスに対しては愛着も憎しみも両方の感情がある。
フランスからすると、植民地とはビジネスチャンスの場でもあるし、移民は労働力としても見られる。どのアングルから見るかによって変わるもので、すごく複雑なんですよ。

――そんなフランスの多様性が映画には描かれています。そして、単に楽観視できる話ではなく、多様な人が共生することで起きる衝突など、様々な問題を描いていました。それはラストシーンでも感じられます。監督自身は、現状をどう思われていますか?
”ラジ・リ” 今も100%多様性を受け入れているわけではないけれど、多種多様な文化が共存していることは、良いことだと思います。例えば、一つの宗教を信じているよりも、いろんな宗教があるほうがいいと思います。
でも、フランスはその多様性を活かしきれてないところがある。アメリカの方が多民族性、多様性を活用できているんじゃないかと思います。

――私たちから見ると、アメリカの多様性にも問題点があるように見えます。白人警官による黒人への暴行問題もあります。監督がそう思われる理由はなんでしょうか。
”ラジ・リ” 確かに、その印象は正しいですね。
フランスは植民地から大量に移民が来て、フランス人として「同化した」という歴史があります。アメリカの場合は、多くの人が移民なので、同化するとかそういう話ではないんですよね。
ただ、アメリカでは、「コミュニタリズム=共同体主義」が重んじられているという一面もあると思います。アジア人ならアジア人で、黒人なら黒人の共同体があり、そのほかの共同体とは交わらないということは、フランスよりも強いのかもしれません。
日本だって、韓国人、中国人、イラン人、たくさんの人が住んでいるのに、「見えていない」ということはないですか?多様性は難しいものなんですよね。やっぱり、分断されているよりは、混じりあうほうがいいと思います。

――日本にいる移民が見えていないというのは、おっしゃる通りだと思います。『レ・ミゼラブル』は、フランス郊外で多様な文化が混じりあっている状態をそのままに描いていて、日本では知ることができないことを気づかせる効果があると感じます。映画を作り始めたときから、世界の人に見られることは想定していたのでしょうか?
”ラジ・リ” もちろん色んな地域の人に見てもらいたい、という気持ちがありました。
しかし、もともとはフランスに向けて作りたいという思いが先にあって、まさかこんなにも世界中で見てもらえるとは想像もしていませんでした。でも、僕自身はユニバーサルで普遍的なテーマだと思っています。
舞台になっているのは小さな街だけど、きっと世界中の色んなところで、自分たちの話だと思ってくれる人がいるんじゃないかと。世界にメッセージが届けばいいなと思います。

――この映画は、外国からは見えざるフランスの一面に焦点を当てた話です。日本にいると、やはり日本特有の問題があると思っているのですが、日本にどのようなイメージをお持ちでしょうか?
”ラジ・リ” 最先端で几帳面で、東芝やSONYなどのテクノロジーが発達していて、渋谷のスクランブル交差点でも、たくさんの人が青信号になるのをキチっと待っていて、整然とした社会だと思います。
でも、そういう整然とした社会になるために、犠牲を払った人もいるのかなと感じました。そんな中で、どんな風に自分たちの幸せを見つけているんだろう、と興味を持ちましたね。

――映画の中の子どもたちは、混とんとした中で暮らしていますが、彼らの未来については、どうなってほしいと思っていますか?
”ラジ・リ” 厳しいところですね。やっぱりフランスの中心部に暮らしている人よりも、郊外に住んでいる貧困家庭に関しては、きれいごとは言えない状況だと思います。

”スティーヴ” 子どもたちの力ではどうにもならないので、大人がケアをして、そこから抜け出したいという気持ち、希望を持てるように、夢をかなえられるように手助けしていかないと。子供だけが自力でそういう気持ちを作り出すのは難しいですからね。

――この映画を観て、よその土地から来た新米刑事のステファンという存在が、なんとか街の状況を良くしようと戸惑いながらも生きている姿が、ある意味希望なのかなとも思いました。
ラジ・リ この映画の中では、ステファンは新入りで、警官として正しくいようと努める役割を演じています。最初はやる気を持って取り組んでいるけれど、うまくいかないことも多くて、壁にぶちあたってしまうということは、現実でも起こっていることだと思います。
僕自身は、個人が動くのではなく、政治が動かないと突破口はないと考えています。今はその政治が不在ではないか、と思います。だから、その先のことを描く第二弾について構想を練っているところです。第二弾は、政治の話になる予定です。
予告編→https://youtu.be/Qr4zSibfDhM


記事画像https://m-huffingtonpost-jp.2020年03月03日 20時35分 JSTアートとカルチャー映画『レ・ミゼラブル』が描く、マイノリティー同士の衝突 「フランスは多様性を活かしきれていないところがある」
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