飯島企画業務日誌

『昔は面白かったな』

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おはようござます😌

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『昔は面白かったな』回想の文壇交友録 石原慎太郎/坂本忠雄
作家として政治家として半世紀余、常に時代の最前線を駆け抜けた石原氏と、文芸編集者として同時代を歩んできた坂本氏。小林秀雄や川端康成、三島由紀夫など、活気に溢れたかつての文壇での交流と逸話の数々、戦前から戦後の忘れ難い情景、時代と読者から遠ざかる現代の文学状況への危惧。さらに、死生感まで語り合っています。

内緒話のようなものも多く楽しめる内容で下世話なエピソードとも言えるようなところもありながら、川端康成、小林秀雄、三島由紀夫、大江健三郎のようなビッグネームと直接つきあいのあった両者による数々の逸話は貴重な証言です。

そのビックネームと、石原氏の自身のエピソードを読んでいると、昔の「文壇」とか「文士」の世界は、無法地帯というか、とんでもない人たちの集まりだったのだなあ、と思い知らされます。

三島さんや小林さんより年下で、率直にものを言う石原慎太郎さんは、先輩たちにかなり可愛がられてもいたようですし、まだ「無頼派作家が、『作家とはそういうもの』だと周囲から認められている時代」でもあったのでしょう。

とくに小林秀雄の迫力と三島由紀夫の繊細さに関わる話は、世間にあまり知られていない人物像として人間臭さを感じます。よほど気が合わなかったのか、吉行淳之介や美濃部亮吉は容赦なく書きおろされています。

政治家生活にふれた話しもあり、田中角栄が小林秀雄に叱られたエピソードは面白かった。当時の大権力者にでも文章のことであれば忖度しない、という小林さんの矜持を見せつけられたような気がします。ちなみに、田中角栄さんは、そう言われて「けっこう落ち込んでいた」そうです。

読み進めているうちに、大先輩が飲みながら「昔は良かったよな」と、男女入り乱れてセクハラ三昧だった頃を回想しているようで「それは、良かったですね😅」とツッコミたくなります。
人の思想には、それを形作る「背景」があります。それを考慮せずに「老害」とか「偏っている」と決めつけるべきではないのでしょう。そうすると、「まあ、しょうがない人それぞれだし、でも何でもありだよね」みたいなことになって、やはり”長生きした者勝ち”見たいな事は否めません。
しかし、今は亡き文壇、昭和の文壇交遊録として興味深い本です。

今後は、「AI美空ひばり」や「パイドン」手塚治虫、「ジェームスディーン」のように、今は亡き文豪の遺された膨大な作品、資料からAI技術で過去の文豪を蘇らし、現代の小説を読ませて、例えば”小林秀雄”さんに評論してもらう。と言う時代になって行くのでは無いでしょうか?
日本で最も有名な文学賞の芥川賞や直木賞なども”AI芥川龍之介”、”AI直木三十五”などで解析し選考するのも可能ですが、幾ら昔の人を蘇らせても所詮、”誰々風”でしかありません。

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