飯島企画業務日誌

図書倶楽部『輪舞曲』朝井まかて

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おはようございます😉

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図書倶楽部『輪舞曲』朝井まかて
大正時代に活躍した名女優。彼女の口癖「私、40歳で死ぬの。」と言う、意味不明な宣言を待たず脳出血で死去、満38歳。物語は主人公の蘭奢が亡くなり彼女に関わった4人の男がそれぞれの”伊沢蘭奢”を語る。
夫の起業を手伝うために子供を津和野に残して東京で暮らす。子供は置いてきたと言うより後継ぎの男の子を義母に奪われたようなものだった。
その時に知り合った、一人目の男は、遠縁で後にカツベンとして活躍する”徳川夢声”と恋人関係になる。
夫の起業失敗で一旦地元に帰るも、東京で見た舞台の衝撃が忘れられず、子供を義母に奪われ居たたまれず離婚し東京へ戻ると、2人目の男で実業家であり文化への造詣も深い”内藤民治”の愛人となり、多大な影響を受けることになった。
女優として名を馳せてから知り合ったのが3人目の男、帝大生の”福田清人”は火遊びの相手。
そして4人目の男は”伊藤佐喜雄”で蘭奢の息子。
伊藤蘭奢の死後、彼女の遺稿が発見され、彼女の生きた証を出版しようということになる。
安定した日々の生活を捨て、罵られ怒鳴られながら踏み込んだ世界で受け取った賞賛は、彼女に何をもたらしたのだろうか。女が自分の道を拓き始める時代、確かにその礎を築いた一人なのだろう。
彼女は、自分のことを見る妬みとも羨望ともとれる言葉『口惜しかったら、あなた方もこっちの岸へ渡っておいでなさいな。簡単なことよ。人並みの道徳心と月々の経済、そして精神の安定を捨てる勇気さえあれば、その川は渡れる。』
女優という仮面の裏側に、覚悟を決め、多くの犠牲を払いながら生きていく一人の女性の姿があった。
華やかで地道で、嘘つきで誠実で、美しくて醜くて、情熱的で冷静だ。そして母のようにあたたかく、淪落の女のように妖しい。
ラストの食堂の親爺さんのエピソードは蘭奢が聞いたら一番嬉しい言葉だっただろう。
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