飯島企画業務日誌

『プリンス』

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おはようございます😉

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『プリンス』
ローリングストーン誌による「歴代最高のアルバム500選 | 2020年改訂版」の関連企画。今回は8位のプリンス『パープル・レイン』について。このアルバムを事前投票でトップに挙げたのは、ラン・ザ・ジュエルズのラッパー兼プロデューサーであるEL-P。彼に同作の衝撃を語ってもらった。
■『パープル・レイン』は、僕が音楽について知る必要のあったすべてのDNAを含んでいる。ラップは入っていないけれど、それでもあの作品は自分の背中を押したすべての要素があわさったものだ。
9歳のときだった。あの映画の予告編を見た――映画自体は見せてもらえなかったけれど。でも、予告編には、彼がステージ上を駆け回り、指をなめ、乳首を触り、髪を整えるシーンが入っていた。それを見て、「これ、マジでなんなんだ」って思った。本当にそれが一体どういうことなのかわからなかった。あまりにわいせつだというので見せてもらえなかったけれど、母親を説得してアルバムは買ってもらえた。いわば抜け穴だ。だって、「Darling Nikki」を聴いた僕はこんな感じだった。「どうやらマスターベーションってなにかを知らないといけないみたいだな」(笑)。「なにが起こってるのかははっきりわからないけれど、この一部になりたい」って思ったよ。
プリンスには、大人になるってこういうことなんじゃないか、という僕の考えや、あるいは謎に訴えるところがあった。プリンスこそ、僕に成長したいと思わせてくれた人だった。そうすれば彼が話していることをわかるんじゃないかと思ったんだ。
あの作品はいわば、リンドラムにのった(ジミ・)ヘンドリックスのギターだ――ソウルであり、ロックであり、ファンクなんだけれども、でも同時に、それまで結びついたことのないやり方で結びついたものだった。プリンスにちょっかいを出す連中があらゆるジャンルにまたがっているのには理由がある。音楽には、再び作り出すことはできないけれど、別の方向に活用することができるアイデアというものがある。彼がやっていたことの断片を取り出して、そこからサウンド全体を築きあげることだってできるだろう。あのレコードのほんの一部分を土台に、全音楽人生をつくりあげることもできるかもしれない。
最初の大きな音楽的な原体験のひとつがプリンスだった場合、ルールなんて考え方は馬鹿らしく思えるようになる。「もし自分がわいせつで、違う響きのものを取ってきてひとつに組み合わせるなんてことをしたらどうだろう」なんて考えない。プリンスが最初のヒーローなら、そんなこと気にすることじゃないんだよ。
「The Beautiful Ones」のクレッシェンド――“彼がほしいのか、僕がほしいのか? だって僕はあなたがほしい”――は、子供心に背筋がひやっとしたのを覚えている。彼の言っていることが感じ取れたし、彼のやっていることが持つ力が理解できた――彼がどうやってその一節にたどり着いたかを理解せずとも。だって僕自身はそういう瞬間に導いてくれるような自分なりの経験なんて持ち合わせていなかったんだから。それでも、とても力強かった。僕はまさしく、「なんてことだ、信じられないほど素晴らしい音楽ってだけじゃなくて、これは僕が考える男のあり方のプロトタイプみたいなものじゃないか」って感じだった。
彼が言っていることには、なにやら経緯とか情熱が宿っていることが僕にはわかった。それがいかに力強いか感じ取ることもできたけれど、理由は把握していなかったし、筋書きもわかっていなかった――いまでも、ご覧の通り、うら若い少年のように、僕はいわば心をかき乱されている(笑)。当時はまるで「うわあ、感情の世界が開かれてる、もうちょっとでわかりそうだ」って感じだった――でも、そんなのわかるわけないんだ、まだ実際に経験したことが一度もないのにさ。
以上が、彼が僕にしてくれたこと。幼い子供だった僕は、彼の手でそれまで認識したことがなかったような感情の領域に投げ込まれて、しかもそれは音楽をきっかけとするものだった。それまで、すべてはとてもまっすぐに感じられたものだ。たくさんの音楽を愛していたけれど、ミステリアスに感じられるものはなかった。プリンスは謎めいていた。いまもまだそうだよ。
記事画像https://rollingstonejapan.com/articles/detail/34710/2/1/1 『
プリンス『パープル・レイン』の衝撃「音楽について知っておくべきDNAを全て含んでいる」rolling stone 2020/10/06 05:00』
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