飯島企画業務日誌

図書倶楽部

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おはようございます😉
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『エレホン』サミュエル・バトラー
こちらの”図書倶楽部”では下記の
オルダス・ハスクリーの「素晴らしい新世界 」
ジョージ・オーウェルの「1984」
芥川龍之介の「河童」
デストピア小説と呼ばれるジャンルの本をご紹介して来ました。
ご紹介した本だけでは無いですが、元々”デストピア小説”の原点となったと、されている本が今回ご紹介する「エレホン」です。
題名は、”NOWHERE”《どこにもない場所=ユートピア》を逆さに綴った”EREWHON”
開拓地を求めて、羊飼いの少年が険しい山々の先に、辿り着いたのが「理想郷」”エレホン国”だった。
人びとはみな優しく、健康的で美しく。でも、そこには私達と異なる思想があった。自己責任、優生思想、経済至上主義、そして技術的特異点。社会の幸福とはいったい何なのか?生まれ持っての健康や社会階級、あるいは環境要因によって決定づけられるものと、何が自分を制御可能にするのか。この国で、人が自分の責任に帰すべきものは何なのか?150年前の小説とは思えぬほど、具体的で深い思索に誘われる作品であった。
《以下引用kazzu008 https://booklog.jp/item/1/4105071513
この国では、「外見の美しさがすべてに勝る」と考えられており、「病気」は最悪の罪なのである。もしエレホン国で病気になれば、その者は刑務所に投獄され、治療ではなく刑罰(最悪は死刑)を受けるのである。また逆に詐欺や泥棒のような「犯罪」は我々でいうところの「病気」のように扱われ、詐欺や泥棒を犯した「犯罪者」は人々から慰められる。そして、機械を持つことは重罪なのである。主人公は懐中時計を持っていたために投獄されたが、主人公の外見が金髪でハンサムであったために裁判で許される。ここが本書の真の価値というべきところであるが、エレホン国で機械を禁止しているのは理由が、我々今の現代人にとっては驚愕すべき理由なのである。それは、機械が今後意思を持って人間を支配するようになるのを防ぐ為ということなのである。
エレホン国の人々は、以前は自由に機械を使っていた。まさに蒸気機関車などを利用していたのである。しかし、あるとき彼らはこう考えてしまった。地球は、太古は植物が支配し、何万年もかけて植物は進化していった。しかし人間が地球に誕生して数千年で非常に進化し、地球を支配してしまった。さらに機械が生まれ、蒸気機関車が誕生するまでに数十年、あるいは100年弱しかかからなかった。では、あと1000年後、あるいは1万年後には何が起こっているだろうか?機械の進化のスピードは人間の進化のスピードよりも格段に速い、いずれ機械が意思を持ち、地球を支配するようになるのは当然の帰結であると。まさに、今の現代で起こっていることをエレホン国の人々は予言しているのである。こういった物語が本書のなかでは淡々と繰り広げられていく。機械の件だけでなく、出産は悪と考えられているが、出産を防ぐことはできないので、その言い訳だとか、いろいろと笑ってしまうようなエピソードも満載である。非常に考えさせられた小説である。
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